長崎の魚石(長崎の昔ばなし第一集より)

 むかし、唐人屋敷にほど近い篭町に伊勢屋という、欲の深い主人が住んでいました。

 ある日のこと、日ごろから仲よくつきあっている唐人屋敷の阿茶(あちゃ)さんが、

 「わたし、一年ほど中国帰ってくる」と、

いってあいさつにやってきました。

 そして、阿茶さんは、伊勢屋さんの土蔵の石垣の中から、青く光る石をみつけました。

 「大人(主人)、大人。石垣の青石売るよろし。わたし買うある。」と、

たのみました。

 「よかたい。あげん(あんな)石、よんにゅう(たくさん)あるけん、あぎょうたい(あげるよ)。ばってんが、いま動かせんけん、あんたがもどったときば、あぎうたい」

 たのまれた主人、あっさりとこたえましたが、阿茶さんは、「石垣こわす金わたし出すあるよ」と、なん度もしつこくたのむのです。

 「さては、あんげん(あんなに)ほしがるとこみると、ごうぎい(たいへん)値うちもんじゃろか」と、

根っから欲の深い主人、阿茶さんが「五百両出す」というにも返事をしません。

 そうこうするうちに、阿茶さんは、国に帰ってしまったのです。

 いっぽう、主人は、職人を呼んで石を割らせることになりました。すると、中から水がこぼれて、金魚が飛び出したのです。

 「こりゃしもうた。大金もうけそこなったばい」と、

たいそうくやしがりました。

 さて、翌年。阿茶さんがやってきました。主人が仕方なしにすべてを話しますと、阿茶さんはボロボロと涙をこぼしながら

「あの石、魚石。水の見えるまでみがく、金魚泳ぐ見える。これ見ると、たくさんたくさん長生きする」と、ざんねんがりました。