横向き地ぞう(長崎の昔ばなし第一集より)

 むかしむかし、ひとりのどろぼうが、町でひとかせぎしたあと、ぬすんだものを大きな包みにして背おって歩いていました。

 「さあ、このあたりでひと休みじゃ」

と、町はずれの森の木かげで、男は、包みをひらいて、ぬすんだ品ものを調べはじめました。ふと、男があたりを見まわすと、小さなほこらがあり、地ぞうさまが立っておられます。

 「地ぞうさまにみんな見られたばい。こりゃあ、大ごとたい」と、男はひざまづいて、

 「地ぞうさま、ゆるしてくだされ。こんこと、だれも言わんと約そくしてくだされ」

と、たのみました。

 すると、地ぞうさまは、

 「いちどだけは、見のがしてやろう。おまえも人にしゃべるなよ」と、

顔をクルリと横に向けられたのです。男は頭をペコペコさげながら立ち去りました。

 それから三年後のこと。男が地ぞうさまの前に姿をあらわしますと、地ぞうさまは、顔を横に向けたままの姿で立っておられました。

 男はびっくりぎょうてん。地ぞうさまにお詣(まい)りに来る人をつかまえて、

 「この地ぞうさま、ふしぎなお方ですたい。おたのみしたことは、かならず聞いてくださる・・・・・・・」

 「むかしのことたい。あれ、これ・・・」と、ある日のできごとを、すっかり話してしまったのです。

 それを聞いたお詣りの人は、

 「さては、三年ほどむかし、うちのだいじな着ものや道具をぬすんだヤツは、きさまだったのか・・・」

と、男を奉行所につき出しました。

 地ぞうさまは、すっかりお見とおしだったのです。

 それからは「横向き地ぞう」と呼ばれ、土地の人びとから尊信されたということです。